業界変革の鍵はサービスの開発責任者が握っている!今後推進していくDXの全容
各分野でDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進み、顧客ニーズや企業課題がどんどん変わっていく現代。テクノロジーを駆使しフードデリバリービジネスはどのように業界変革していくのでしょうか? そして出前館におけるDXとは? 取締役 兼 執行役員 プロダクト本部長・鈴木孝知、開発グループ責任者・吉川英興に、出前館のDX戦略、エンジニア目線でできることや理想を聞きました。
フードデリバリーにおけるDXと出前館が向き合っている課題
―各分野でDX(デジタル技術による業務やビジネスの変革)が進み、顧客のニーズや企業課題もどんどん変わっていく時代に生きていると思います。フードデリバリーのDXにおいては、現在、どのようなことが求められているのでしょうか?
【鈴木】
まず出前館の事業として、以前まではユーザーが注文をすると加盟店に注文が入るという注文代行業、言うなればアフィリエイトサイトでした。大きく変わったのは、シェアリングデリバリー(配達代行)をするようになってからです。ユーザーに料理を届けるところまでを責任をもって運んでいるので、かなり大きく、求められることが変わったと思っています。
以前はECサイトと同じで、注文を受けたら注文情報を加盟店に流すという処理でよかったのが、それをさらに、30分以内にお客様に届けるとなると、配達の仕組みが求められるようになります。どのルートで行くのがいいとか、ルーティングの仕組みもきちんと作る必要があるし届けるまでの時間についても、自分たちが責任を持つようになったことで、耐障害性やスピード感が大きく変わってきているというのが一つあります。
加えて、今までは国内の競合他社だけを相手にしていたのが、今ではグローバル企業が競合他社になっている中、求められるシステムのレベルが、中身も質もすごく上がったなと感じています。
お店や料理の選びやすさ、注文した後の待っている間に不安にさせないようにする仕組み、単に注文を受けるだけではなく、ユーザーが快適にフードデリバリーを楽しめるようにする、というところに各社が力を入れています。それぞれの方針はあるものの、ユーザーがいかに快適にフードデリバリーを楽しめるようにするかがポイントです。
【吉川】
まさに出前館がやってきたサービス、つまり電話で注文していた出前を20年前にインターネットで注文できるようにしたという点が、最初のDXということだと思います。そして今起きているDXは、フードデリバリーサービスの配達機能をシェアすることにより、配達機能を持たない店舗でも出前が可能になったという点では大きく変わったところだと思いますね。
ここ1年で一気にデリバリーの需要が伸び競合も増えて、競争が非常に激しくなっているところで、商品価格ももちろんですが、ユーザー体験がものすごく大事なんです。何回も使ってもらうためには、食べたいと思って40分後に届くと思っていたら、ちゃんと40分後に届くというのが大事なこと。2時間も3時間も遅れたら、ご飯って困りますよね。毎日同じようにサービスを提供できるというところが求められていると思います。
―ユーザーが実際にアプリやサイトを見て注文して、配達員が店舗へピックアップに行き、ユーザーに届けるという流れの中で、それぞれにシステムが関わってきますが、エンジニアが苦労するのはどのあたりなのでしょうか?
【吉川】
まず需要が伸びると、それだけ注文数がすごく増えるということ。出前館は構築してからけっこう古いシステムなんです。一気に性能を上げるというのが難しくて、少しずつ性能を上げています。さまざまなシステムの組み合わせで成り立ち、性能が悪いところで詰まって動かなくなってしまう、ということが起きるので、そういった意味で性能を上げていく部分がすごく難しいというのがあります。
配達の時間についてもコストに直結する部分で、商品のお届けは配達員が実際にリアルに働いて運んでいるので、同じ時間でたくさん運べないと、1注文あたりのコストがぐっと上がってしまうという側面があります。以前は家族や友人が集まって3人分、4人分を頼むときにデリバリーを使用するケースが多かったのですが、今では1人や2人という少人数・小規模の注文が増えています。最低注文金額を下げていくことも求められている現状で、より少額の商品を運ぶためには、もっと配達効率をアップさせないといけない。配達員のアサインや経路の選択など、配達効率をより良くしていくシステムの構築がすごく大事になってきていると思いますね。
―フードデリバリー業界全体の課題としても共通しているのでしょうか?
【鈴木】
フードデリバリー業界は「世界最速のECサイト」という言い方がされています。注文してから最短15分で商品が届くって、Amazonですらできていないことなんですよ。私も色んなECサイトに携わってきましたが、例えば倉庫システムが1日止まっても、少し遅れて届いたかなぁくらいで、皆あまり気づかないんですね。しかしフードデリバリーの場合、配達システムが1時間止まるとエンドユーザーにわかってしまうんです。なぜなら15分で届くはずのものが、1時間経っても届かないから。そういう意味で、「世界最速のECサイト」というのは、フードデリバリー業界全体がプライドを持ち意識しているところだと思います。そこをいかに実現していくかについては、他のECサイトと違う、フードデリバリー業界ならではの視点であると思います。
ただ、業界全員が最速を目指しているわけではなくて、効率を上げコストを下げるために、「2件持ち」と言って、1回の配達で2件の注文をピックアップするのをAIで対応している会社もあれば、1秒でも早く届けることを目指しているところもある。そこに各社の方針の違いやテクノロジーの色が見えてきます。出前館は「料理の温かさ」に重きを置いていて、お店や料理によって調理時間が違うことを予測して、料理ができあがる時間ぴったりに配達員がピックアップにお伺いするようなシステムを目指しています。
出前館におけるDXの展望とは?
―これからテクノロジーを使ってどんなことを実現していきたいとお考えでしょうか?
【鈴木】
大きく2つあります。まず1つ、純テクノロジーでいうと、AI技術をいかに活用していくかが大事になってきます。配達経路しかり、配達員の割り振りしかり、多岐にわたる注文内容に対して、無駄なく早く配達できるにはどうすればよいか、これにはAI技術が欠かせません。
それからレコメンド機能ですね。出前館では今、ユーザーがデリバリーを頼もうとしたら、ありがたいことに300~400店舗見られる状況です。その中で、今あなたが食べたいのはコレでしょう?お昼だからお弁当でしょう?というようなところを、きちんとレコメンドしてユーザーが手間なく注文できるようにする。出前館を使うユーザーは料理を食べたいので、サイトで10分も20分も選びたいわけではありません。そうした選ぶという手間を極力なくす、というパーソナライズの面でも、純テクノロジーとしてAIがすごく大事なポイントだと思います。
もう1つの機能面でいうと、グローバルサービスと戦っていく上で大事な「日本ならでは」という視点です。ここが料理のレビューだと思っていまして、食べログ文化やランキング文化など、ほかの人の評価が高いお店で食べたいという傾向が、日本は比較的強いと思っています。逆にグローバルサービスでは他の機能に比べて、あまり力を入れていなかったりするので、料理自体への感想やオススメでユーザーも楽しく、そして加盟店にも料理のおいしさで選ばれるという満足感を感じてもらえる機能は、日本発の出前館だからこそ強化していきたい部分です。
【吉川】
ユーザーから見て、自分が食べたいものを選べるってすごく大事なんですよね。今探し求めているものが、30分以内で届くものなのか、はたまた、今日はちょっと贅沢して美味しいステーキ屋さんを探しているのか。色んなニーズがその時々であると思うのですが、とくに都市部だとお店も商品も増えていて、食べたいものを探すというのがちょっと難しくなってしまっている状態です。ユーザーそれぞれが、自分が求めているものを探しやすいとか、そういったところを強化していくことが大事。その人がそれまでどういったものを食べてきたのか、どうやってお店を選んでいるのかをちゃんと拾い上げて、それぞれのユーザーに合わせて提示していくというところを、もっともっとやっていけると良いなと思っています。
お店視点での話でも、この1年で初めてデリバリーを始めたとか、むしろデリバリーのみで出店するというお店も多いんです。そういう方たちが、どう集客をしていくのか? 今までだと駅前を歩いている人にポケットティッシュを配ったり、WEBで広告を出したりとあったと思いますが、例えば新しいメニューを開発してもアピールする場があまりなかったりするので、加盟店側からも発信していって、それをユーザーが見つけやすい環境も大事だと思っています。出前館のシステムを通して、お店が自分たちのマーケティングをできるというようなところもやっていきたいですね。
配達の面では、効率よくとか、遅れないということがすごく大事。フードデリバリーはピークタイムが狭いサービスで、お昼前や夕方などに注文が偏るので、約束していた時間から大幅に遅れて商品が届くようなことがないように、そこをどうやって考えていくか。時間帯によって配達距離を調整するとか、そういうことを考えながらサービスのレベルを上げていくというのが、すごく大事だと思います。
今、エンジニアに求められていること
―直近で進めているDX分野の刷新プロジェクトはありますか? また、今エンジニアに求められる技術や人材像についてお聞かせください。
【鈴木】
出前館自体が電話帳をIT化するDXサービスですが、今だからこそとくに力を入れているという意味では、美味しい料理を食べるまでの時間をいかに短くするかという点に尽きます。配達の速さだけを言っているのではなく、サイトを立ち上げてから料理が届くまでの時間の短縮化。美味しいお店を手早く探せるというところは、テクノロジーとしてAIやパーソナライズ、レコメンドエンジンを使ってできることかなと思っています。
配達面で、いかに最短マッチングを実現させるかという部分もDXでやっています。テクノロジーの力を借りて、新人配達員でもベテラン配達員並みの効率で配達できるようなシステムは、まさに今年、力を入れて改修しているところです。
【吉川】
イートインのお店にデリバリーサービスを使ってもらうという、そこをDXにしてきているのは出前館が誕生したときからそうでした。現金ではなくオンラインで決済するなど、世の中一般で行われていることを出前館でもやっているというのはあります。どんなシステムもユーザーが必ずいるので、その人たちが使いやすいとか、効率がいいとか、求めているものにちゃんとなっているのかが大事ですね。注文するエンドユーザー、加盟店、配達員。それぞれで考え方も求められているものも違います。
エンジニアにもチームで動く中で色んな役割がありますが、スキルの面でいうと大きくは他のWEBサービスとはそんなに変わらないと思います。日進月歩で新しい技術が出てくるので、エンジニアである以上、新しいものを吸収していくことは常に求められているのですが。どちらかというと、ビジネス的な部分でのキャッチアップが大事なんです。出前館でいうと、ECである側面、個人情報の扱いや決済システムがどう動いているかを知らなければいけないし、配達では日本の道路がとうなっているのか、駐車場がないとバイクが止められないよねという、現場からの想像力が大切です。ECサイトなので当然、マーケティング要素は強いというところもありますね。
【鈴木】
今が成長しないといけない、というところです。マーケットからも飲食店側からも出前館の成長が求められています。売上を伸ばすことが加盟店へのメリットにもなるし、マーケットからもフードデリバリーが成長フェーズだと思われているので、作りたいものが作れる、やりたいことをどんどんできるという面白い現状です。これいいね、ユーザーのためになるよね、加盟店のためになるよね、というのをどんどん開発できる環境にあります。粛々と開発したいという人も大事ですが、やりたいことがあって、どんどん提案していきたいという人も楽しめる会社なのではと思っています。
―最後に、これからジョインを考えるエンジニアへメッセージをお願いします。
【吉川】
フードデリバリー業界ってものすごくホットだと思うし、スピード感をもって開発していくというのが求められているところで、ここでチャレンジしていくというのは、なかなかない体験ができるのでは。興味がある方はぜひ応募してほしいと思います。
【鈴木】
成長できる環境を提供できます。新しいテクノロジーを採用したり、LINE社を含め様々な会社から技術者が集まってきたりしているので、ハイレベルな技術者同士が切磋琢磨して、意見交換しながら開発できる環境になっているんですね。出前館に元からいるプロパーエンジニアも、この1年間すごく成長できたと口をそろえて言っています。す。
成長したい若手エンジニアも、自分の有り余る技術を発揮したいというベテランエンジニアも大歓迎です。一緒に世界一を目指しましょう!
型コロナウィルス感染防止対策を充分に行った上、撮影時のみマスクを外しております。