目指すのは"ジャズバンド"のような組織。出前館の情報システム部で働く醍醐味とは
情報システム部門とは、企業の社内で使用されるシステムやインフラ環境の企画・導入・運用保守を担う組織です。各種SaaSの導入、社内システム運用、IT資産管理やネットワーク運用構築、セキュリティ対策、ヘルプデスク対応など、その業務は多岐にわたります。企業の成長を支える"縁の下の力持ち"のような存在といえます。
出前館の情報システム業務を支えているのが、IT本部 情報システム部 IT戦略グループ・ITヘルプデスクグループ グループマネージャーの足立です。今回は足立が出前館に参画した経緯や部署の業務内容についてインタビューしました。
より規模の大きな企業で新たなチャレンジをしたかった
足立さんが出前館に入社された経緯についてお話しください。
私は前職時代に1人情シスとして働いていたのですが、あるときWantedlyを経由して出前館からカジュアル面談のお誘いが届きました。前職では2人目の情シスのメンバーを採用するために動いていたので「面談を受ける経験をしておいたほうが、採用活動に役立つだろう」と思い、カジュアル面談を承諾しました。
カジュアル面談では、現在の上司である米山輝一が会社の実情について包み隠さず話してくれました。そして、面談の最後に「ぜひ出前館の採用面接を受けませんか」と言ってくれたのです。記念受験のつもりで受けたところ、なんと1次面接から5営業日ほどで内定が出ました。
もともと私はフードデリバリーが好きで、よく利用していたこともあり、米山の話を聞いて出前館の業務に興味を持ちました。それに当時の私は、前職の業務において、ある程度の「やり切った感」を覚えており、新しい挑戦をしても良いかなと思っていたのです。これまでは200人規模の企業の情シス業務しか経験がなかったため、より大きな企業で自分の力を試したいと思い、出前館への転職を決めました。
現在、私はIT本部 情報システム部のIT戦略グループとITヘルプデスクグループのグループマネージャーを兼任しています。IT戦略グループはSaaSを中心としたシステムの導入やシステム関連の業務改善、業務フローの整備などを担っています。ITヘルプデスクグループは出前館社内からの問い合わせ対応や各システムのアカウント管理などを担っています。
課題が山ほどあった出前館の情シス
足立さんが出前館に参画されたばかりの頃は、情報システム部に多くの課題があったと伺っています。当時のことを教えてください。
私が出前館に参画した当初は、情シス業務の専任の社員がいませんでした。担当社員は2名いたものの、1名は人事と情シスの業務を兼任。もう1名は出前館のインフラエンジニアと情シスの業務を兼務していました。そのため、当時は社員ではなく派遣社員の方々がメインで情報システム部を運営していたような状態でした。
派遣社員の方々は本当に誠実に仕事をしてくださっていたと思います。しかし、社内システムの管理・構築について専門知識を持っているわけではないため、根本的な改善・解決がなかなか行われず場当たり的な対応が続いていました。そのため、出前館の情シス業務において、オペレーションやシステムの負債が積み上がっていたのです。
現場で対応をしてくださっていた派遣社員の方々に全く非はなく、出前館の社員が情シスの業務を統合的に管理できていなかったり、中長期な視点を持った方針策定をしていなかったりという点に課題がありました。
そこで業務改善を行うため、入社してすぐにヘルプデスク業務に加わり、問い合わせ対応やアカウント管理を経験することからスタートしました。自分自身が業務に携わることで、現場の課題がよりクリアに見えてくるためです。実際に現場で仕事をしてみると、「この運用は不要なのではないか」「ここはツールを導入することで効率化できるのではないか」といった点が見えてきました。
余談ですが、IT本部 情報システム部のファシリティグループとCRMプラットフォームグループのマネージャーである前田真輔という者がおり、彼は私の入社の1カ月半後に出前館へと参画しました。幸運だったのは、前田も「片っ端から自ら現場の業務を経験し、不要なものを積極的に削る」という情シスに対する価値観が似ていたこと。前田とも足並みを揃えつつ、情報システム部の抜本的な改善に取り組んでいきました。
改善事例①:個々のメンバーが自律的に動ける組織へ
ここからは、具体的な改善の事例について伺います。
まず組織面の改善として、ITヘルプデスクグループのメンバーのマインドを変えていったことが挙げられます。かつて、このグループの派遣社員の方々は「あくまで社員が企業の主体であり、派遣社員は社員から言われた仕事をやる」という考えが根強かったです。しかし、組織のメンバーが主体性を持ってPDCAを回していくには、このマインドを変えていく必要があります。
そこで、私や前田が現場で「こういう動き方をしてほしい」という例を見せることからスタートしました。そのうえで派遣社員の方々に、自分自身で判断して方針を決めて良いと伝えていったのです。また、業務中にも「あなたはどう考えていますか?」と相手に質問し、マネージャーが指示を出すのではなく自主的に考えてもらうようにしました。
そうすると、徐々に派遣社員の方々の行動が変わってきました。ITヘルプデスクグループは営業日の夕方に定例ミーティングをしており、はじめは私や前田も参加していました。それが、少しずつマインドを変えていった結果、マネージャーがいなくても定例ミーティングが円滑に回るようになってきたのです。
また、情報システム部では社内のメンバーがアクセスできるポータルサイトを運営しています。私はある程度の要望は出しましたが、コンテンツのほとんどは派遣社員の方々が自ら内容を考え、自主的に作成してくれました。たとえば入社オンボーディングのページを見てみると、パソコンのセットアップ方法やアカウントの設定方法などが図とともにわかりやすく解説されています。
初期の頃はこんなに立派なページではありませんでした。私が「人間は視覚で情報を認識するので、画像や動画をたくさん盛り込むと良いですよ」とアドバイスしたところ、どんどんページがアップデートされていったのです。その結果、入社したメンバーはこのページを見ればほとんどのことがわかるようになり、入社オンボーディングにかかる工数も大幅に削減することができました。
改善事例②:中期計画を立案。そして他部署と連携をとりシステム導入
他の事例はあるでしょうか?
情報システム部として、攻めの業務にもチャレンジしました。先ほどもお伝えしたように、かつての情報システム部は場当たり的な対応をくり返していた組織でした。怪我をしてから絆創膏を貼っていくような処置ではなく、予防接種のように俯瞰的に組織の今後のことを考えて、出前館の社員がより働きやすく生産性が向上する施策に取り組むことにしました。
具体的には、情報システム部の今後について中期的なグランドデザインを作りました。今後の数年で、いま社内で使用しているシステムをどのように変えていくかという計画を立てたのです。これに基づき、出前館全体での生産性向上や業務の自動化・効率化を実現できるような社内システムを構築していきます。
グランドデザインをベースに推進した事例として、SmartHRの導入が挙げられます。もともと私たちは、労務系のシステムとタレントマネジメント系のシステムの2つを使っていました。そして、これらをSmartHRに移行する利点が大きいことがわかっていました。
SmartHRはAPIやWebhookを提供しているため、連携出来るシステムはアカウントの自動作成・削除などが実現できます。また、他にもOktaの導入を進めているのですが、Oktaの従業員情報で不足している要素をSmartHRで充足することで、人事データベースとしての役割を補完することを検討しています。
はじめは、ツール導入は人事部が主導して情報システム部はあくまでサポートを担うつもりでいました。ですが、SmartHR導入のキックオフの際に「情報システム部も移行プロジェクトに注力しなくては」と考えを改めました。なぜなら、SmartHRは重要度の高いシステムであり、今後もさまざまな領域で活用するため、運用や権限ロール、セキュリティポリシーなどの設計をきちんとしておくべきだと判断したためです。
そこで、情報システム部と人事部の定例ミーティングを設けるなどして、密に情報連携をしながら導入を推進しました。これは、情報システム部が他部署と連携して、全社的に使うシステムを導入した初の事例になります。
SmartHRを導入した結果、労務担当者からは「日々の業務が楽になった」という声が挙がっています。SmartHRは便利な機能がたくさんありますし、操作方法がわかりやすいため、今後も多くの導入メリットが生じてくると考えています。
Just Like Playing Jazz
今後「出前館の面談を受けてみたい」と考える方も出てくるかと思います。他社の情シス系の部署と比較すると、出前館の情報システム部にはどのような魅力があるでしょうか?
出前館は「規模が大きいのに、社内システムがまだまだ整っていない」会社だと思っています。これを良く捉える方とそうでない方がいると思いますが、私は「改善のしがいがある環境」であると捉えています。多くのことにチャレンジしたい思いのある方ならば、こんなに良い会社はありません。
また、出前館は2020年にLINEグループとの資本業務提携を行っているため、2023年10月からのLINEとヤフーとの合併に伴って、各社のシステムをどのように統合・連携させるかも考えていく必要があります。力試しをしたい人にとって、有益な経験を積める環境になっています。
入社される人に求めるマインドはあるのでしょうか?
IT本部には、上の資料のようなMission・Vision・Value・Credoがあります。これは、先ほど名前を挙げた米山が作成したものです。これらの要素を持ち合わせていてほしいのですが、特にCredoの「Just Like Playing Jazz」はIT本部らしいフレーズだと思います。ジャズという音楽では、指揮者がいなくても各々のプレイヤーが自分のパートに責任を持ち、その場の空気に合わせて自由に音楽を奏でます。そして、決めるところは決めながら、チームで一つの素晴らしい音楽を作り上げます。
社員ごとに得意分野は違います。自分の持っている技能に誇りや責任を持ちつつも、メンバーたちが集まったときに素晴らしいチームになる。そんな体制を実現できるような、自律自走しつつチームプレイも得意な人に参画してもらいたいです。
それを実現するには、自分なりの考えを持ちそれを他の人たちにも説明できること。さらには方針を立てて施策を推進できる方が望ましいと考えています。心のなかで「私はこうしたいのに」と思っているだけでは、企業は良くなりません。自らソロを演奏して音楽を盛り上げるジャズのプレイヤーのような方を、私たちは求めています。