出前館とともに歩んだ15年。業務コンサルの坂本は、なぜサービスとこれほど真摯に向き合えるのか

0AF8DFE2-1ADA-4EEE-B00B-8D17727DF3D2_1_201_a.jpeg

2008年に出前館へと入社。それ以来、多種多様な職種や業務を経験しながら、約15年にわたり出前館で働き続ける――。これは、プロダクト本部 開発サポート部 業務コンサルグループでグループマネージャーを務める坂本 和也の経歴です。

長く出前館の歴史を見てきた坂本は、コンサルティングを通じて出前館の開発プロセス全体の改善に取り組んでおり、現在の業務では、これまで出前館で培ってきた知見やノウハウがフルに活きているといいます。今回は坂本のキャリアや業務コンサルグループの目標などをインタビュー。その言葉の裏側には「サービスへの愛情」がにじみ出ていました。

目次

開発プロセス全体の改善を行うグループ

業務コンサルグループの担う役割をお聞かせください。

出前館では、開発プロセス全体をより効率の良いものやミスを防げるもの、各種の法令や監査基準を遵守できるような適正なものに変えることでプロダクト品質の改善・向上を図っています。業務コンサルグループでは、そのためのルール策定やガイドラインの作成や、発生してしまった障害の原因の分析や対策の検討をします。

つまり、特定のチームや単一のプロダクトにフォーカスするのではなく、グループ全体やプロダクト全体を改善できるような働きかけを行っています。さらに、障害発生時にメンバーが作成している障害報告書の記載方法の整備を行うことで、より品質向上のために役立てるような活動を推進している立場になります。

基本的に、対峙する相手が自分のチームではなく他の開発チームなので、うまく情報収集と分析をしたうえで課題を発見して、対処方法を検討して、どうすればみんなに受け入れてもらえるかを考えなければなりません。開発組織全体のコンセンサスをとるための動きをすることが重要になります。

出前館に入社されてから現在まで約15年働かれていますが、担当業務はどのように変遷してきましたか?

FCDFF8FD-853A-4B18-9E69-AD839B00A83B_1_201_a.jpeg

もともとは開発チームのエンジニアとして2008年に入社しました。当時はまだまだ開発チームの人数が少なくて、私はWeb APIの開発すべてとデータベースのチューニングすべてを任されていましたね。当時は加盟店関連のシステムをどんどん増やして、各種のオペレーションを自動化するための導入開発を進めていました。

開発メンバーが徐々に増えて会社の体制が変わっていくなかで、主にシステムの運用を見るようになりました。キャリアの途中では総務部で働いた時期もあって、システム以外の業務も経験しています。

その後、システム周りで問題が頻発した時期があって、再び開発チームに戻って運用を担当しました。そして、私はプロダクトの過去の経緯や各種の仕様を知っている人間なので、運用だけではなく仕様や設計のレビューをしたり、障害発生時に指揮を執ったりするようになりました。これがコンサル的な役割のスタートです。

2020年にLINEとの協業が始まってからは、開発組織のメンバーがすごい勢いで増えて、開発のスピードも向上しました。その状況下で、障害を減らしてスピーディーに品質の高いプロダクトを生み出す体制を作っていかないと、という課題意識が自分の中に生まれました。そのための活動に取り組むなかで、自分のやってきた業務が "部署"として会社から認められ、今にいたります。

ユーザーのことを第一に考えて、システムを設計する

長く働くなかで印象的な業務もたくさんあったと思うのですが、まずは社内でコンサルティング業務を担うよりも前の時代の経験をピックアップして話していただけますか?

2CE16E2F-0EAE-4B8F-AD2F-D4823A5F233E_1_201_a.jpeg

かつての出前館は、インターネット上でエンドユーザーからの注文を受け付けた後、その注文情報をFAXで加盟店に送るシステムでした。その部分を入社して間もない頃に見せてもらったのですが、ユーザーからの注文がリストとして積み重なり、FAXでどんどんさばいていくのが目に見えるシステムでした。すごく衝撃を受けましたね。

デジタルで入ってきたデータをわざわざアナログに直して送るなんて、エンジニアはなかなか考えません。そのままデジタルで受け渡したほうが効率は良いですからね。でも、当時の飲食店にはパソコンもまだそれほど普及していなかったですし、もし店舗にパソコンがあったとしても操作に慣れていない人も多かったと思います。

一方FAXは、多くの飲食店で日常的に使われている身近なツールだったので、ユーザーのことを第一に考えて、システムを設計することの大切さを学びました。デジタルとアナログとをつなげて、ビジネスモデルを生み出したのもすごいと感じましたね。

他には、2009年の末頃にシステムの大規模なリプレイスがありました。これも、入社して間もない頃です。そのプロジェクトには正直あまり関わる機会がなくて、最後の不具合つぶしくらいしか携わっていなかったんですけど、リリース作業の際には人が足りなくて手伝うことになったんですよ。夜間作業で、お腹が空いたので出前館のサービスを使ってオフィスまで出前を頼みました。

顔なじみの加盟店の人が持って来てくれたんですが、リプレイスがあることを知っていたらしく、こちらを気遣って差し入れをいただいたんですね。申し訳なさと感動とで、胸が熱くなりました。やはり、自分たちの作っているシステムが加盟店の方々のためになっている、世の中のためになっているんだという思いがより強くなりました。

「エンドユーザーや加盟店の方々と直接的にコミュニケーションした」という意味だと、営業担当者と一緒に加盟店へ同行しお話をさせてもらったり、カスタマーサポートのヘルプに入ってエンドユーザーや加盟店の方から電話を受けたりしたこともあります。研修で配達員の経験したこともありました。こうした経験を通じて、システムだけではなく、より広い視野で事業やプロダクトを見る姿勢が身に付きました。

15年間で蓄積した知識を、業務コンサルにフル活用する

エンドユーザーや加盟店で働く方々の声を直接聞いたことで、具体的にはどのような学びがありましたか?

C778044E-C97A-44A7-870C-EBDAC83182F5_1_201_a.jpeg

何よりも、ユーザーのことを第一に考える視点を持てたのが、私の強みになったと思います。たとえば、システムのこと"だけ"しか考えていない人の場合、1分間システムが止まった際に「24時間のうち1分だけならば、それほど大きな問題ではない。もっと重要な課題を解決するために時間を割こう」とドライに考えるかもしれません。

でも、たとえ1分間の問題だとしても、ご飯を食べたかった人からすると1注文のうちの1注文が無くなるわけで、その人にとってはトラブル発生率100%なんですよね。それに、昼食や夕食の時間帯に加盟店が1分間も注文を取りこぼせば、その店が大きな損害を被りますし評判も落ちてしまいます。表面に表れている数字だけを見るのではなく、その裏側にいる大勢の方々のことを念頭に置きながら、施策を考えられるようになったのは、私自身の大きな力になっています。

その後、業務コンサルの役割をスタートしたわけですが何から手をつけましたか?

まずは、組織が開発・運用に使っているツールやライブラリなどが古いままの部分があったので、それらを徐々に新しいものにしていく活動をしました。それから、冒頭の話にもありましたがシステムの仕様・設計レビューや障害発生時の指揮執りなどですね。

そこから時代が変わってLINEとの協業の時代に入っていくと、組織の人数と開発するシステムの数が増えるごとに、細かな障害が頻発するようになりました。そういったトラブルが積み重なるとやはりみんなが疲弊してしまうし、開発にも集中できない悪循環に陥ってしまいます。

障害報告書を書く文化は昔からありましたが、チーム間でその情報がうまく共有されていなかったり、何が原因がどう対処したのかなどがよくわからなかったりとカオスになりかけていました。障害報告書は書かれているものの、書かれただけでうまく活用できていなかったんですね。これはもったいないと思い、1年以上前から私のほうで障害報告書のレビューや分析、報告をして、対策を検討する流れを整備していました。1年と少しの期間でリリースした機能の数は3倍と急増しましたが、障害発生率と影響は低減していく傾向が継続しています。

出前館ではちょうど今、既存のシステムを段階的に新しいシステムへと変えていくリプレイスのプロジェクトを推進しています。もともとオンプレミスだったインフラ環境をクラウドに移行したり、アプリケーションの設計や実装そのものを変えたりといった、規模の大きいプロジェクトです。このプロジェクトにおいても、これまでのシステムの仕様や歴史的な経緯など、自分の持っている知識や経験を活かしてコンサルティングを行っています。

社内で業務コンサルティングを担うようになってから、坂本さん自身が習得したスキルはありますか?

昔は社員の人数がそれほど多くなかったので、何かのプロジェクトを推進する際に、関与するのが「自分一人で手を動かして変えられる」くらいの範囲で事足りていました。でも、人数も増えて組織構造も変わってくると、自分の力だけで変えるのは無理という状況になっているんですよね。だからこそ、なんとか他の人を巻き込むスキルを身に付けて、プロジェクトを動かしてきました。「人を巻き込まないと何も結果を出せない」というプレッシャーもあったかな。

出前館という会社に、長くいられたコツもそこにあります。これまで「こんな環境は嫌だ」とか「もっと別のことをしたい」と言って、会社を去っていく人をたくさん見てきました。でも、大変な時期とかうまくいかない時期こそ、自分の働き方を変えて環境に適応していく必要があると考えています。それを柔軟にできていたから、自分はまだこの会社で働き続けているのかなと思いますね。

会社全体、システム全体に波及するような改善を目指して

業務コンサルグループとしての今後の目標はありますか?

4E4530BB-C5A2-4588-A534-C11FB78B0AB5_1_201_a.jpeg

現在はプロダクト本部内に限定した改善に留まっていますが、会社全体やシステム全体に波及するような根本的な改善にも関与していきたいと思っています。ユーザーのためになるシステムを、問題を起こさずに作り出すことは会社としても重要なことなので、その体制を構築していきたいです。

どのようなマインドやスキルの方が、業務コンサルグループにマッチすると思いますか?

マインドとしては柔軟性があることが大事ですが、同時に芯の強さも持ち合わせていてほしいです。出前館に限らず、やりたいことだけを100%できる会社はないですし、自分の意見が常に100%賛同してもらえる仕事もありません。それでも、めげずに前を向けることが大事です。理想と現実とのギャップがあっても、根気強く進んでいける人がいいですね。それから、サービスのことを好きになれる人であってほしいと思います。

スキルとしては、幅広い技術についての感受性を持っており、学び続けられる方が望ましいです。業務コンサルグループでは、日常的に最前線のエンジニアとコミュニケーションをとる必要があるので、彼らが何の技術を扱っているのか、どのような選択肢があるのかを理解したうえで話をしなければなりません。そのための知識や技術は必要ですし、もしも自分に特定技術の実務経験がなかったとしても、その技術の利点などを理解しつつエンジニアとコミュニケーションできる人がいいと思います。

最後に伺いたいのですが、15年という非常に長い間、出前館で働き続けられたのはどうしてだと思いますか?

出前館に入社する際に、「ここで長く働きたい」と考えていたのと、やはりサービス自体がすごく好きだということ。いろんな思い出がありますし、サービスが有名になってきたので、余計に離れ難くなっているところもありますね。それに、社内で自分のスキルや経験が必要とされているのもわかっているし、後輩たちもたくさんいますから、途中で放り投げるのも無責任かなと思っています。

それから、働き続けている理由は他にもあって、先ほど述べたように2009年のリプレイスのときに設計や開発にほとんど関われなかったのですが、実はこのプロジェクトは失敗して、ものすごく悔しい思いをしたんですよ。自分は何もできなかったなあと。だからこそ、今後は自分がこれまで培ってきたノウハウをきちんと活かして、成し遂げたいビジョンを着実に実現していきたいです。やはり、出前館には良いサービスになってもらいたいですし、今まで関わってきた人たちのこととか、これから関わる人たちのことを考えたら、一瞬たりとも気は抜けないです。

サービスへの思いが伝わりますね。坂本さんの目から見て、今のフェーズの出前館はどのような点が面白いと感じますか?

フードデリバリーの領域でライバル企業ができたのは、大変ではあるものの面白いと思うんですね。生き残っていくためにユーザーに選ばれるサービスを目指して、他者との差別化が必要です。プロダクトを作る立場として、そこに参画できるのはやりがいが大きいし面白いと感じます。

それに、LINEとの協業体制を組んだことで、可能性はいっそう広がったと感じています。良い意味での自由さがありつつ、かつハードな挑戦ができる状況下で、自分を鍛えて成長したい人には良い環境です。

チーム開発 フロントエンド 採用

前へ

運用・開発体制とデータモデルをイチから再構築。Salesforceの特性を最大限に活かすリプレイスの全貌

次へ

プロダクトの改善が事業の成長をけん引する。だからこそ出前館のプロダクトマネジメントは面白い