人と人をつなぐことが私の役割。プロダクト本部 本部長が出前館で目指す組織ビジョン

デリバリーの需要が拡大するなか、企業として急成長する出前館。私たちは組織の改編やシステムアーキテクチャの刷新などを行い、より良いプロダクトを目指して事業運営を続けています。この体制下で、組織作りの中核を担うのが執行役員 プロダクト本部 本部長である米山輝一です。

今回は米山が組織作りの重要性に気づいたきっかけや出前館に参画した理由、今後のビジョンなどを聞きました。

目次

人に関わる仕事をする面白さに気づいた原点

まずは、米山さんが過去のキャリアのなかで"組織作り"の大切さに気づいた経緯から教えてください。

原点になっているものはたくさんありますが、古いものですと新卒時代にさかのぼります。楽器メーカーの開発職として採用されたのですが、同期入社のうち私を含め数人だけが大学卒、他の多くの人たちは大学院卒で特定技術のスペシャリストばかりでした。

当時は、インターネットが一般家庭に普及してから数年が経過したくらいの頃です。多くのメーカーが、インターネットを使った新しいビジネスを模索していました。私が配属されたのは、社内のさまざまな部署からWebを活用した新規事業などの相談を受ける部署です。私は大学卒で比較的若かったのと、Webの構築を学生時代からやっていたこともあって、そうした新規案件を受け持つことが多かったです。社内外のさまざまな人をつなぐ仕事を任され、幅広い年齢・職種の人たちと関わるようになりました。

そんな中グループ内のレコード会社に出向した時期がありました。企業の社員だけではなく、アーティストの方々とも一緒に働くようになったのです。アーティストには、非常に独創的な発想をされていたり、自身のアウトプットにこだわりがある方が多いです。その強い個性によって、価値のある作品を世の中に生み出しており、そうした方々と関わることは私にとって非常に印象的でした。

こういった経験をするなかで、「世界には多種多様な人がいて、それらの方々が自分の強みを発揮することで世の中が良くなっている」と思うようになりました。そして、人と人とをつなぐことがより好きになりました。もともと私はコンピューターに向かって1人で仕事をするのが好きなタイプでしたが、人と関わって仕事をすることの面白さに目覚めたのは、この会社で経験したことが原点だったと思います。

40代では組織作りに挑戦したい

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今の出前館で米山さんが担う役割に通じるようなエピソードですね。

特定の領域でスペシャリティを持っている人は世の中にたくさんいます。その反面、そういった方々をつなぎ合わせる役割の人は世の中に足りていません。だからこそ、人と人をつなぐような仕事を担うことが自分の価値なのではないかと思うようになっていきました。

その後はITメガベンチャーに転職しましたが、その会社でも"人をつなぐ"役割を担うことが多かったです。さまざまなプロダクトの開発に携わりましたが、特に印象に残るものとしてタクシー配車アプリがあります。私はそのプロジェクトにおいて、ハードウェアの開発を統括していました。

タクシー配車アプリの開発においては、アプリとタクシーメーターとの情報連携や車内でのデジタルサイネージなど、ハードウェアでやるべきことが山のようにあります。当時そのITメガベンチャーにはハードウェアエンジニアがいなかったため、ハードウェア開発の組織そのものを立ち上げるところからスタートしました。

私にはプロダクトマネジメントのスキルはあったものの、ハードウェアの詳細な設計・開発の知見はありませんでした。そこで、ハードウェアのスペシャリストに組織へ参画してもらったり、スピード感をもってハードウェア開発ができるパートナー企業を探して、連携をとりながら開発をしていきました。自分で言うのもなんですが、ハードウェアとしては驚異的なスピードでプロダクトを作ったと思います。そうした数多くの経験を積む過程で、組織作りの重要性を実感するようになったのです。

20代の私は、ソースコードを山ほど書いていました。5W1Hでいえば、どうやって作るのかを考えたHOWの時代ですね。30代ではソースコードをガシガシ書きつつ、プロダクトマネジメントも担うようになりました。何を作るのかを考えたWHATの時代です。そして40代になってからは、それを誰と成し遂げるのか、つまりWHOの要素として規模の大きな組織の運営に挑戦しようと考えていました。

挑戦の場として出前館を選んだ理由

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出前館に転職したのはなぜですか?

前提として私は、すでに組織や仕組みが出来上がっている会社よりも、それらを自分たちの力で作っていける環境がいいと思っていました。出前館の存在は転職前から知っており、客としてデリバリーを注文したこともありました。そのため、すでにプロダクトや組織は完成されているだろうと思っていましたが、実はそうではないと知ったことが出前館への転職を決めた理由です。出前館は第二創業期を迎えており、組織やプロダクトを抜本的に変えている最中にあります。

名前が知られた会社であるのにも関わらず、事業再編のタイミングにあるならば、他社ではできないような挑戦ができると思いました。私は自分のキャリアを、ビンゴゲームのように「まだ埋めたことのないマス目を次の職場で埋めていくこと」を重視して選ぶようなところがあります。楽器メーカーやITメガベンチャーでは経験できなかったことを、出前館でなら実現できると思えたのです。

出前館に参画してから間もない頃に、会社や組織の課題だと感じたことはありますか?

たとえば各チームや個々人が良くも悪くも自律的に動いている影響で、会社全体としてノウハウが蓄積できていませんでした。また、それに近い話ですが会社全体としての制度設計や仕組み化がうまくいっていなかった部分もあります。そうした箇所を、私が入社してから全体的に整えていきました。

一方で、これは出前館のプロダクト開発を統括している吉川英興さんの影響が大きいと思いますが、各システムで分業化がされていて、チームが適切に機能しているのはエンジニア組織として優秀だなと思いました。

それから、開発組織の採用もそれほど成功していませんでした。出前館くらいの知名度で人が採れないということは、採用選考のプロセスに課題がある可能性が高いです。そこでプロセス改善を行い、徐々に成果が出るようになっています。

その他に、プロダクト開発の体制が改善した箇所はありますか?

2020年3月に出前館はLINEグループとの資本業務提携を行い、LINE側からかなりの数のメンバーが出前館へと出向しました。その影響もあり、プロダクト開発をどちらかといえばLINE側のメンバーが主導するような状況が続いていました。

ですが、徐々にそれが変わってきています。出前館側から開発組織のマネージャーが現れたり、システム障害が起こった際にも出前館のメンバーが率先して対応するようになりました。これは私ではなく組織のマネージャーたちの功績が大きいですけれどね。

システムを開発する過程では、必ず何かしらのトラブルが発生します。それらを乗り越えることで、エンジニアは成長すると思っています。もちろんメンタル面のケアは必要ですが、メンバーがいろんな経験をすることで、出前館の開発組織がさらに強くなると考えています。

アーキテクチャ刷新やデータモデル変更に取り組める環境

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システム面では、現在どのような挑戦をしているのでしょうか?

まずはシステムの全体的なモダナイズをしています。出前館は2000年に開始したサービスであり、長く開発・運用が続けられてきました。

システムの大部分がオンプレミスのサーバー上で動いていたり、技術的負債が蓄積していたりと、多くの課題がある状態でした。それらのマイクロサービス化やクラウドシフトを推進しています。単にシステムをクラウドに載せ替えるのではなく、アーキテクチャ変更も含めた取り組みをしているのは、エンジニアにとって面白い部分です。

また、食事だけではなく食料品・日用品をデリバリーするリテール事業も開始しています。これに伴い、システムのデータモデルそのものも新しい概念を扱っていく必要があります。例えば出前館は食事のデリバリーを前提としたシステムであるため「在庫」という概念がありませんでした。しかしリテールでは、その概念を扱うことが必須です。

また、トイレットペーパーを例にすると「シングルかダブルか」「4個入りか6個入りか」などたくさんのバリエーションが存在します。それらをどのようなデータモデルで扱うか、どういったUIで見せるのかなどを考えなければなりません。アーキテクチャやデータの持ち方まで含めた、システムの抜本的な設計を見直していくフェーズにあります。

その環境下では、どのようなスタンスのエンジニアが活躍しやすいでしょうか?

極端に言えばすべてを疑ってかかる人ですかね。「なぜ、この箇所はこのような設計になっているのか?」「より良いシステムにする方法はないか?」と疑問を持てる人がいいと思います。なぜなら、今あるシステムや仕組みは決して完璧なものではなく、改善の余地があったり、歴史的な経緯などから悪い構造になっていたりしているからです。それらに疑問を持ち理由を調べたうえで、変えるべき部分について変える努力をする人が活躍できる環境です。

これほど多種多様な挑戦ができる会社は他にはない

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エンジニアが他社ではなく出前館で働く利点についてお話しください。

これは私がよく言っていることなのですが、ユーザーの少ないニッチなサービスでも、数多くのユーザーが利用するサービスでも、エンジニアがやるべき努力の量にそれほど大差はありません。それならば、多くの人にリーチできるサービスのほうが、開発や運用に携わっていて面白いはずです。デリバリー領域のなかで、出前館はリーディングカンパニー的な立ち位置にいますから、自分の作ったサービスが世の中で使われる実感を味わえます。

それから、先ほど述べたようにモダナイズやリテールへの挑戦などの最中にあります。多くの人に使ってもらえて、かつ組織・技術・ビジネスのいずれも新しい取り組みをしている会社というのは、世の中を見渡してもそれほど多くはないので、そこに参画することに醍醐味があるでしょう。

最後に、米山さんがこれから出前館で挑戦したいことを教えてください。

引き続き、働く人たちのモチベーションをうまく向上させながら、より良い開発組織を作っていきます。もちろん、メンバー全員の考えや志向は違いますから組織改善は簡単なことではありませんが、取り組むだけの意義があると思っています。

また、出前館をもっと持続性の高いサービスにしていきたいと考えています。ユーザーからめちゃくちゃ好きになってもらわなくてもいいですが、ユーザーが利用するサービスの選択肢として常に残り続けるような存在でありたいですよね。もちろん、めちゃくちゃ好きになってもらえたら、ありがたいことこの上ないので、出前館もそんなサービスになればいいなと思っています。

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